編曲とは、大まかにいえば音楽を構成するブロックの順番を変えること、アレンジです。(詳しくは後述)
いわゆるディスコでDJさんたちが即興でやっているやつですよね。
最近はDTMもといデスクトップミュージックなどが一部界隈では流行しているようですが、これもやっていることは似ています。
彼らは一体どんなソフトを使っているのでしょうか?
Takahiro Aokiさんオススメの編曲ソフトは
FLスタジオ
スタジオONE
エイブルトーンライブ
の3つだそうです。
なんと、気前よくどれも無料体験版が上がってます。
「どれも基本的には機能面では変わらないけど、なかでもFLスタジオは世界で最も良く使われていて、直感的にはこれが一番扱いやすい。」
FLスタジオはボーカロイドを使って音楽制作しているような人たちにも人気で、DTMのムーブメントを根底から支える重要な存在です。
作り込めば高いクオリティの楽曲も作り出せるので、演劇でも使えますね!
紙面の都合により、各ソフトの操作方法について詳しくはyoutubeでご確認ください。
たいてい英語ですが感覚でやっていけると思います()
JPOPの流れは、
イントロ
→Aメロ
→Bメロ
→サビ
→間奏
→Aメロ
→Bメロ
→サビ
(→Cメロ)
→サビ
→アウトロ
のような構成をしています。
編曲によって、この構成をいじりつつ自然に繋ぐのが、DJさんのお仕事の一部です。
でも、音楽の展開にもいわば「起承転結」のようなものがあるので、B→A→サビ→Cでは物語が成り立たない。
例えばサビ→A→A→C→B→サビのように、盛り上がるところはちゃんと盛り上げる。どうやらここらへんがセンスの見せ所らしい。
実際にMr. ChildrenのInnocent Worldを使って楽曲の構成を説明して、編曲するAokiさん。
倍速や1/2倍速に変えたり、ピッチは変えずにテンポだけをいじったり。
「スライスツール」を使って切り出したブロックをリピートして使ったり、順番を変えたり。
ただ切っただけでは繋がりが悪いので、音量を多少下げて入りの部分を調整します。
テンポを変えたりできれば、尺の調整にも対応できて演劇でも使いやすくなりますね。
ここまでソフトの紹介や編曲の仕方について触れてきました。>
しかし…
いざJpopを使うとなると、著作権に関わるガチガチのルールが絡んできて、いわゆる「オトナの事情」が立ちはだかります。
たとえば、一瞬でも演劇のPVなどに楽曲を用いたら、その時点でお金は取っちゃダメ。
公共の電波に載せたりしようものなら15分程度でJASRACから警告が届くそうです。
一体どうやって調べてるんですかねぇ…不思議です。
とにかく既存の楽曲だと大体何をやってもダメ。
劇団が自前で既成の作品を「打ち込み」して流すのもNG。
アニソンはとくに危険で、非常に目をつけられやすいそうです。
中には、完全オリジナルで作詞作曲した楽曲なのに、歌詞の一部が類似しているだけで「著作権違反」と扱われるケースもあり、たいへん複雑なんだそうです。
でも待って、六本木のクラブとかはJpop編曲して爆音で流してるじゃん!あれはいいの?
実は、クラブはJASRACにDISCOの経営者がお金を払ってるから、堂々と使えるらしいです。
同様に、ニコニコ動画も運営が利用料を支払っているから、昨今のような「歌ってみた」の文化が発展してきたんですね。
以上、超ざっくりまとめると
JASRACに登録されている音楽には手を出さないこと。
「じゃあ劇を無音でやるのか?
そういうわけにはいかないよね笑」
ひとつには、著作権の切れたクラシックを使う方法があります。
たとえば、クラシックをボーカロイドに歌わせるのはギリOKだそうです。
(でもそれはニコニコ動画もまたクラブと同様に使用料を支払っているからだとかって声もあって、実際にはよくわからない...)
でも雰囲気づくりにはクラシックだけでは限界がありますね。
そこで使えるのが、royalty free musicです。
世の中にはroyalty free、すなわち著作権フリーの楽曲が存在します。
実際にこのワードで検索をかけると、タダで使える音源がたくさん見つかります。
今回は、これをベースに加工を施すことで楽曲を制作する方法をご紹介いただきました。
音源の集め方については、著作権フリーの他にサンプル集を買うという方法もあります。
たとえばVengeance Essential Club Soundsなど。
調べたところ¥10000+αと若干値が張りますが、劇団で使用する分にはひとつ買っておいても損はないかもしれません。
いよいよワークショップも大詰めです。
Aokiさん曰く、
「音楽単体で曲を買う人はほぼいません。」
「好きな音楽をイメージしてみればわかるけど、大抵はPVがきれいだったとか、ジャケットがかっこいいだとか、友達に薦められて聞き始めたというふうに、映像や情報が絡んでるケースがほとんどです。」
たしかに、消費者側が主体的にアーティストを選択しているというよりも、宣伝広告を通して見聞きした作品の中から、気に入った曲を聴いている側面はかなり強いような気がします。
レコード各社がやっているタイアップ商法はまさしくこれです。
テレビ番組やCM、映画の主題歌などに使われることで、PV以外で知名度を高める手法ですね。
つまり、作品の価値はそれ自体だけでは決まらず、関連する情報といった諸要素によって複合的に決定されるといえます。
たとえばPerfumeのPVやLIVEは、耳だけでなく五感で音楽を楽しむからこそ、より良いものに感じる。
演劇作品を鑑賞したときも同じで、役者の演技だけではなく、その作品の音響や映像といった演出にも着目して作品は評価されます。
だから、どれをとっても良い作品づくりには欠かせない要素なのです。
これは逆に言うと、音楽をおろそかにすれば劇全体をチープなものにしてしまう。
「演劇をやる上では、良い音楽で良い動きをすれば良い作品になるし、ダサい曲で良い演技をしたとしてもそれは良い作品にはなりません。」
「音楽と映像は常に表裏一体だと思って、演劇に臨んで頂ければと思います。」
と最後に述べて、今回のWSを締めくくりました。
以下、Q&Aです。
Q. 楽曲編集を外注したいが、相場は?
A. 「単価¥5000。」
Q. 音楽と映像の結びつきについて、音楽の価値とはどこにあると思いますか?
A.「映像。好きな音楽って必ず映像とか関連づけがあると思う。」
Q. どうしても使いたいときはどうすればいいの?
A.「ハコに聞いてみて。でも個人経営のレストランとかだと控えた方がいいかもね。」「有線で包括契約していれば大丈夫。」
Q. DJから作曲に転向したきっかけは?
A. 「DJはじめたころ作曲ソフトを買ったけど全くわからなかったからタンスの肥にしておいたのを、あるとき病気して自宅療養中にいじってみようかなと思って作曲してみたら、とあるレーベルさんから『やりませんか?』とお声がかかったのよ。「無理でしょ!」って思ったけど、案外乗り越えられたから、じゃあやってみようかなって思ったのがきっかけかな。」
Q. 独学とおっしゃいましたが、どうやって学ばれたんですか?
A. 「教科書買ったりDTMマガジンみたいなオシャレ系の雑誌を買ってもさっぱりわからなかったけど、時間があればyoutubeを真似して、気になったことをA4のメモ帳が全部埋まるくらい書いて勉強しました。」
時間的な制約もあって、一部扱えなかった点については次回またお話を伺えるかも知れない、とのことでした。
今回のWSを通して、音楽業界の裏話や楽曲編集のノウハウを身につけられたことと思います。
著作権の制約は演劇作りにおいては最大の障害です。
楽曲編集を通して自前で音楽が作れるようになれば、演出の幅も広がって、より品質の高い作品を目指すことができますね。
今後の作品づくりに期待です!