作演が語る「児童文学倉庫」


旗揚げ公演作演出を務める主宰・吉岡七海が、ただひたすらに好きな児童文学について語る!

児童文学、軽く見てない?

わかりやすい言い回しに少ない文章量。小さい子供を対象とした文学でありながら、児童文学は決して大人を対象としていないわけではありません。むしろ大人になったからこそ分かる良さもきっとあるはず。だって大人が書いてるんですもの。

その一方で、児童文学を読み続ける大人はそう多くはありません。子供向けだからでしょうか?それとも役に立たないからでしょうか?確かに子供向けですし、役に立つかと言われれば立たないかもしれません。
ですが、「人はなぜ本を読むのか」と考えたとき、答えは「役に立つから」だけではないでしょう。だから細かいことは気にせず、まずはページをめくってみてください。子供向けの本ですからそんなに時間はかかりません。

児童文学は大人が子供のために作った文学です。そこに込められた思いは、きっとほかのどんな文学にも負けないはず。ですから児童文学と言って侮ることなく、でも構えることなく読んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。

第一回「今だからこそ絵本が読みたい!」

児童文学の中でも特に対象年齢が低く読みやすさではトップを走る「絵本」。文章だけではなく各々の作品に特徴的な絵が添えられていて、視覚的に楽しめるのがいいですね。
ほのぼのとした日常を描いた作品から、児童文学とは思えない深いテーマを扱った作品まで、私が好きな絵本を集めてみました!

「ばあちゃんのおまじない」 
なかの さよこ・きむら よしお ぶん きむらよしお え

かんさらなんさら かんさらやあ
それがばあちゃんのおまじない。お仏壇の前でも、けがをした時も、赤ちゃんが夜泣きしたときも、唱えるのはこのおまじない。
主人公である「さっちゃん」の視点から描かれる田舎の元気なばあちゃんの姿がとても印象的な作品です。独特な絵も相まって、全体を通して素朴な温かみのあるお話になっています。
読んでからのお楽しみといとうこで具体的な内容には触れませんが、一つだけ、私がこの絵本で一番好きなところをご紹介しましょう。 それは最後のシーン。お話が終わったあとに一ページめくると、そこには文章はなく絵だけでさっちゃんたち一家のだんらんが描かれています。 この独特の余韻の残し方がこの絵本の一番好きなところです。今まではずっと「さっちゃん」の視点で見てきた世界から、ふと絵本を読んでいる自分に戻って「おしまい」とつぶやきながら本を閉じる。
とても魅力的な、いまだに家に残っている数少ない絵本の一つです。

「100万回生きたねこ」 佐野洋子 作・絵

「私的不朽の名作」にランクインするほど大好きな絵本です。こちらもいまだに家に残してます。
100万回死んで100万回生きたねこの話です。100万人の人がそのねこを飼ってかわいがって死に涙しましたが、そのねこは自分が大好きで、飼われていることも飼い主も大嫌い。だから1回も泣いたことなんてありません。
あるときねこは誰のねこでもなくなってノラ猫になります。そこでねこは自分よりも大好きに思える白いねこと出会います。二匹のねこはずっと一緒に生きていくかと思われましたが、白いねこはあるひねこの隣で死んでしまいます。ここで初めてねこは泣きます(私も泣きます)。泣いて泣き疲れて息絶えたねこは、もう二度と生き返らなかった、というお話。
子供向けでありながら「生と死」について扱ったとても深みのある絵本です。大人になってから読み返してより深まるタイプではないでしょうか。それでいて何かを考えさせるというよりは感じさせるところが児童文学の児童文学たるところな気がします。


「ぼくを探しに」 シルヴァスタイン 作 倉橋由美子 訳

(原題”THE MISSING PIECE” Shel Silverstein)
今回最後の一冊は、どちらかというと大人向けかもしれません。実際、私がこの本に出合ったのも高校生の頃です。とても読みやすく内容も多くありませんが、子供が読んでもすこし「?」となるような、年を重ねるごとに解釈の変わるお話かと思います。児童文学とは若干ずれるかもしれませんが、素敵な本ですのでお付き合いください。
題名通り、「ぼく」を探しにいく物語です。「ぼく」は自分に何かが足りないと思っていて、それを見つけるために旅をします。「ぼく」は足りないかけらを見つけられるのか、「ぼく」は果たしてどうなるのか。やはり「読んでみてのお楽しみ」ですが、絵本を卒業して長らく経った「大人」の皆さんにこそ読んでいただきたい絵本です。
原文は英語ですがこちらも易しい言葉遣いですので興味がある方はぜひ試してみてください。


第一回「今だからこそ絵本が読みたい!」以上です!

ここでは紹介できていない魅力的な絵本が、あなたの身近にもきっとあります。まずは一冊手に取って読んでみてください。世界の見方が、少し変わるかもしれません。


   
  このエントリーをはてなブックマークに追加


講座

どんな人にも分かりやすい!演劇についてのいろはが学べる講座の開講予告!

記事を読む

特別記事

かわいい洋服がいっぱいの「リフル」さんとのコラボ企画について!の予告

記事を読む

Page Top
inserted by FC2 system