音響ワークショップ独占ルポ!

はじめに

 人間、生まれたときには十字架を背負うらしいのですが、最近百字架くらいは背負っている気がします。初めまして、ミランダ・カーです。
 嘘です。
 すきま工房の舞台監督をしています、小高です。大体ミランダ・カーは日本語で文章を書かないので、聡明でない読者の方もすぐ見抜いたことでしょう。
 今回の記事は、ミランダ・カーと関係がありません。たぶん、次回以降の記事もあんまり関係ないと思います。ちなみにうちの母は、ミランダ・カーをオランダ産の車だと思っていました。それはダッチ・カーでしょうに。
 閑話休題。
 みなさんはDJと聞いたらピンときますか?…はい、『ドンジャラ』のことだと思った人は廊下にでも立っててください。
 DJ、まあ聞いたことある方は多いと思います。でもって、『ヘッドホンに左手を添えて、右手で円盤をきゅきゅっとこする』みたいなのを想像されるんじゃないでしょうか。僕はそんなやつを想像してました。
 そしてこの記事はそんな方向けの記事なのです。なんてったって、すきま工房プレゼンツ・DJ講習会の独占ルポなのです。やりましたね!皆さんはこの画期的な試みの証言者になるのです。

2015年12月20日、その界隈では有名なDJ侯爵さんを講師にお迎えして、東京大学駒場キャンパスにてDJ講習会は行われました。その一部(始終?)をお伝えしていきます。

音の編集について

 DJといえば、やはり音源を即興で編集していくのがかっこいいですよね。その技術について、お教えいただきました。
 音は大きく分けて低音(バスドラム)、高音(ハイハット)、中音に分けることができ、その音源の低音だけや高音だけを流す・取り除くといったことが可能です。また、音源は2つ同時に流すこともできます。同じ音源でも重ねるとまた違って聞こえてくるのが面白いですね。
 また、演劇につながるアドバイスとしては、『セリフのある場面では、中音を緩める・あるいは無くすことによって、セリフが聞き取りやすくなる』というのがあります。セリフのある場面で音響を使いたい場合は、我々劇団としてはこういったことも考慮していく所存です。
 ただし音割れには気を付けましょう。音源が音割れするとミキサーのレベルメーターという部分が赤くなります。音割れしてしまうと、DJとしてはやり直しです。
 続いては、参加者の「音のカットのテクニック」についての質問にも答えていただきました。音を終わらせる瞬間に、音量をゆっくり下げたり、音量を一瞬あげてから落としたり、いろいろな終わらせ方があるみたいです。ただ無理な終わらせ方は、機材を傷めてしまう危険があり、ハコ(そのパフォーマンスを行う劇場なりクラブハウスなり)から文句を言われることもあるので注意が必要です。
 イコライザを利用した余韻を残す方法もご教授いただきました。イコライザを切る順番で、次の展開が明るければ高音域を、暗ければ低音域を残すようにきるといい感じで余韻が残ります。楽器の印象についても把握しておくといいでしょう。楽器には、例えばピアノが得意とするのは中音域である一方で、チェンバロはより高音域を得意とするといったような特徴があります。楽器が得意な音域だけを残し、不得意な部分は切るといったテクニックもあるんですね。

音楽×演出

 講義は演出についての話に移ります。演出の悩みの一つが、「音楽がほしいんだけど、その音源を探すのが大変」ということ。その解決策が、曲をテンポから考える方法です。TVでも音数を減らしてピアノだけなどにすると、なぜか感動できる気がします。速いテンポだと、ギャンブル性・中毒性が高く、お客さんの正常心を奪う効果があります。お客さんを早く帰らせたいときは、もちろん「蛍の光」が有効ですが、それだとあまりに露骨なので、bpm小さめの大人しい曲を流します。徐々に音量を下げていくと、片付けの音も入ってきて、お客さんを帰らせる効果が高まりますね。
 次は、作品を通してのテーマ曲を違う雰囲気でいろんな場面で使いたい場合についての解説です。ミュージカル映画では、テーマ曲のアレンジが作品のいたるところで使われたりしますが、現場では「そのテーマ曲を象徴するフレーズ」の一部を切り出して、いろんな場面に紛れ込ませるというテクニックで表現するみたいです。そうすることで、テーマ曲の予告編のような効果になります。bpmを調整し、場面転換などのときにさらっと混ぜるといいみたいです。

bpmについて

音源の要素の一つにbpmというのがあります。これはbeat per minuteの略で、平たく言うとテンポのことです。通常人間の持っているbpmは125あたりです。テンポを調整するつまみで、bpmを変化させることができます。そして、脈拍に近い、つまり125に近いbpmだと(演劇が面白くなくても)音楽だけで楽しい気分になれるとか。(もちろん我々は面白い演劇を目指していきますよ。)
 曲ごとのbpmの相性についても教えていただきました。ロック・トランス・アニソンなどのジャンルごとにだいたいbpmが決まっているようで、bpmの調整によって片方のbpmがもう一方のbpmの倍数になるようにすれば、混ぜるのは簡単みたいです。実際にbpm180のトランスとbpm90の「ロミオとシンデレラ」(ボーカロイド曲)をミックスしていました。それでも合わないときは、低音をなくすことでビートを分からなくさせてしまうという方法もあるみたいです。

豆知識

ここからはDJとしての豆知識です。
DJが会場入りしてまず最初に行うべきことは、荷物をDJブースにちゃんと片付けること。荷物の放置はお客さんの転倒などのトラブルに繋がりかねないので、荷物の整理はオーガナイザー(イベントの主催者)の負担軽減につながるのだとか。
また今回のDJ講座は実際に操作を行うパソコンの画面を投射して行われたのですが、このようなパソコンでDJの操作を行うのをデジタルDJと言います。僕が想像したようなターンテーブルを用いたアナログなDJはほとんどいないとか。
 ほかに気になるのは、著作権のことですよね。ディスコはお店側が従業員としてDJを雇っており、JASRACに包括的に契約をしているみたいです。より正確には、ディスコには音楽レーベル側から使ってくださいという営業も来ます。一方でクラブは、パーティー会場を貸しているだけという体裁で、DJのことは知らんぷりのようです。ただ、DJが著作権で摘発されたケースはないとか。演劇などで音楽を消耗品として利用する分には大丈夫なのではないか、という見解でした。

最後に

 以上が、DJ講習会の大体の内容です。ちなみに使用ソフトはDJintro、セラートDJあたりがおススメとのことでした。今回の講習会を個人的にまとめると、
・音源のミックスにはbpmに留意すべし!
・音域を使い分け、音響と人のセリフの共存を目指すべし!
・bpmを使って人心をコントロールすべし!
といったところでしょうか?
 いや、意外に長くなってしまいましたね。僕がこの前提出を忘れた産業事情という講義のレポートよりも長くなってしまいました。それくらい内容の濃い講義だったということで、ご容赦ください。今回ご教授いただいた知識が、皆様の何かしらのお役に立つといいですね。僕らの本番にも活かせるといいのですが…。
 ちなみに第二回をやるか?お?みたいな企画は持ち上がってるみたいです。日程は1月23日です。どうやらまた別の新しい切り口になりそうなので、ぜひ期待してください!近いうちに続報の告知記事がくると思われます。
 それでは、百字架どころか三千字架ぐらいになりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。


   
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